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拝啓 最愛の妻
拝啓 最愛の妻
交際を始めたときから、あなたを愛していました。
冴えない服装も、化粧っ気のなさも、あなたらしいと思っていました。
若いうちから便秘に悩むあなたは、意外と健康志向でした。内科で便秘薬を処方してもらっていたにも拘わらず、一切服薬しませんでしたね。その習慣は、25年経った今でも変わっていません。
つき合ってから初めてのバレンタインデーには、チョコレートケーキを焼いてくれましたね。塩味の強い味つけは、あなたのオリジナルなのでしょう。自信満々に手渡してくれたあなたの表情は、今でも忘れられません。
バレンタインデーから1年経たないうちに、あなたの妊娠が発覚して入籍したこともよく覚えています。
互いの両親から呆れられ、絶縁状態になってしまいました。
一男一女を授かり、幸せな家庭を築くことができたことは、結果的に良かったと思っております。
あなたは私を見てくれていたのに、私は仕事を理由にあなたを見ようとしませんでした。あなたの表情が暗くなっていたことに気づいていながら何もしなかったことを、猛省しております。
子どもが社会人になって独り暮らしを始めると、あなたは見違えるようにファッションセンスに磨きがかかり、化粧もするようになりました。交際していた頃のような明るい表情に戻っていることに、あなたは気づいていますでしょうか。
あのときのバレンタインデーのチョコレートケーキには、お返しをしていませんでしたね。
今日はホワイトデーです。実は、あのときのお返しをあなたに渡していたのです。
あなたは友達と温泉旅行に行くと言って出かけてしまったので、直接話すことができませんでした。
あなたが出かける前に飲んでいたココアには、あなたがなかなか使おうとしなかった下剤を30滴ほど入れておきました。下剤が慢性になっている人は30滴でもなかなか効かないそうですが、あなたにはすぐに抜群の効果が現れるでしょう。
昔から便秘に悩むあなたに、私ができる愛情表現です。
私はあなたを愛しています。
これからも愛し続ける所存です。
どうぞ、若い男友達との温泉旅行を楽しんできて下さい。
どうか道中気をつけて。
敬具 夫
追伸
お土産はいりません。
あなたが健康で私の元に帰ってくることが、1番のお土産です。
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