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信号のない横断歩道、電信柱のすぐそばに寄り添うように、ぽつんと咲いたタンポポを見た時、舞がタンポポを好きだったのを思い出した。道端にタンポポがあれば必ず匂いを嗅ぎにいっていたし、私はそれを見て微笑みながらも早く行くよと急かしていたことも。
別に急かすことなかったな、もっといっぱい嗅がせてあげればよかった。
そう思った時涙はもうあふれていて。車にいた人からして見れば私は相当変な人だったろう。道端のタンポポを見ながら泣いていたのだから。
死んでも魂は永遠らしい。若い頃はどうとも思っていなかったが、今となっては救いでしかない。この世にいなくてもどこかで生きている。舞はどこかで生きているのだ。舞が亡くなってから何度も舞に話しかけたが、舞に届いていたかはわからない。
けれどこのタンポポと一緒なら届く気がした。
きっと、舞が咲かせたタンポポだから。
きっと、舞がこの世にいなくても大好きだった香りを楽しみたいから咲かせたタンポポだから。
涙が溢れて視界は霞みながらも、しゃがんでタンポポの方に向かって祈りを捧げた。
舞にタンポポが届きますように。いっぱい香りをかいでね。舞がこの世にいなくても元気でいますように。
またいつか会えますように。
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