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ケンちゃんが浮気をした。付き合う時に、ずっと好きだったとか言っていた癖に、浮気をしたのだ。そうかと思えば別れないの一点張り。頑固に。こうと決めたら絶対に変えない人なのだ。
私はレモンスカッシュの泡が、下から上へと上がって行くのを見て、小さくため息を吐く。
私たちは、付き合うと決めた日サイダーでゲームをした。サイダーを溢れさせないゲーム。でも、あの時グラスはいっぱいになって、甘くて爽やかな香りを辺りに漂わせながらグラスから零れたのだ。
私たちの幼なじみと言う境界線を好きという気持ちがあふれて越えたように。
目の前のレモンスカッシュはまだ手が付けられていないのに、長細いグラスの七分目しか入っていない。レモンスカッシュの炭酸は強いはずなのに、こんなんじゃ気泡が表まで飛び出ることも叶わない。
「なんで別れたくないのに、浮気するの?」
私は泣いたりしない。もちろんショックだった。すごく傷ついた。ケンちゃんは浮気をするような素振りを私の前では微塵もみせなかったのだから。
一緒に居れば笑わせてくれるし、大事にしてくれる。一緒に居ない日だって、連絡もマメだった。それなのに……。
未だなぜケンちゃんが浮気なんかしたのか、私にはどうしても理解できなかった。
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