軌跡なしの奇跡

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君を遊びに誘った。 高校で同じ部活だったカノジョに、俺はずっと惹かれていた。 「部内恋愛は、したくないんだよね」 何かの拍子に、そう言ったカノジョの声が、何度も頭の中でこだまする。 俺も確かに部内恋愛はごめんだった。 だから、最後の大会で県大会に行ったら、遊びに誘うと決めたのだ。 こういう時の人の力は恐ろしい。 びっくりするほど力がみなぎり、県大会を決めた。 だから、君を遊びに誘った。 …その時は、いいよ。と言われたのだが…。 やっぱり受験が終わったら。 そう言って繰り越された。 なんというか、嫌な予感がした。 この予感は的中。 カノジョの受験が終わった日に、再び遊びに誘ったが… 2人は、ちょっと…。 終わった。 卒業式の日、カノジョが好きな人と写真を撮りたくて、ウロウロしているのを見た。 他の部員がエールを送っている。 なんだ、みんな俺以外の奴は、カノジョの恋愛の事知ってんのかよ。 ハブられた感覚が自分を襲って、なんというか、こう、やさぐれた。 このままでいいような気もするし、それを虚しくも思う。 どうせ実らない恋だ。足掻く必要も無いだろう。 カノジョの幸せを切に願い、俺は身を引いた。 …もし、いわゆる運命の人ってのがいるとして、それがカノジョだったのだとしたら、きっとどこかで、また会えるさ。だから、今はさよならだ。 大学に入学しても、カノジョのことを想う頻度は変わらなかった。 いつまでも引きずっている自分にも、それほどまでに好きだったのに、軽く去って行ったカノジョにも嫌気がさし、バイト先の、1つ年上の女性と付き合った。 俺の趣味は車だ。 大学生ながら、人脈と親の理解に恵まれ、車を所有していた。 古い車で、ローバーというメーカーの、ミニという車だ。 彼女の趣味も車で、同じ車に乗っていた。 同じ魅力に惹きつけられた俺らが意気投合するのも、仕組まれたようなものだった。 それなりに、仲良くしていた。 これでカノジョの事を忘れられると思っていた。 …違った。 想いは、加速するだけだったのだ。
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