ごめんね、ばあちゃん

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 スマホの着信音で目が覚めた。俺は起き上がり、スマホを手に取り、出た。 「はい、大竹です」  出てから、動けた、と思った。すぐに、何と説明しよう、と頭が回転し始める。  スマホの向こう側から聞こえてきた上司の言葉は、予想外のものだった。 「大竹、生きてたか! 良かった、良かったぁ!」  俺は何のことか分からなかった。  上司に言われてテレビをつけて初めて知った。  いつも俺の乗っている電車が脱線事故を起こして、大変なニュースになっていた。  死者や怪我人が多数出ているという。  その日は有給扱いになり、休みになった。  俺はテレビのニュースを見ながら、呆然として、ばあちゃん、と呟いた。  俺の身体を必死の形相で押さえつけていたばあちゃんは、いつのまにか姿を消していた。
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