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「私には無理だなぁ、そんな人。ちゃんと、私のことだけが大好きな人と一緒にいたい。だから、あいつ、いい奴だったんですよ」
「あいつ?」
怪訝そうな顔した高瀬さんが聞き返してくる。
「ほかに好きな子ができたから、別れたいって言ってくれた。誤魔化して二股かけて、そのうち自然と遠ざけていけたりできたのに、しなかった」
少しの沈黙の後、高瀬さんにしては小さな声が続く。
「……つまり、あれか。男と」
「別れました。というか、振られました」
「マジ…………」
それきり黙るもんだから、焦ってしまう。
「ああ、黙らないでくださいよ、ここで!
助かってます! 高瀬さんのクズ発言で呆れて、気が紛れて!」
「あのな……」
いつもに比べて、高瀬さんのキレがない。
そして私はいい感じにお酒が、入ってきてくれた。
だからペラペラ余計なことを話してしまう。
「でも、あれですね、なんか、どうしたら良かったのかはわかりません」
高瀬さんは、黙ってジッとこっちを見てる。
「私なりに、あいつに一生懸命恋してたつもりです。でも、心変わりって、あるんですね、なんか、やっぱ」
「泣けばいーだろ」
ジッと見たまま、ボソッと呟くように言った。
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