好きだ

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(まさかの秋田のおっさんだからなぁ) あれは、マジでモタモタしてたらヤバい。 多分本気出してきたら石川なんてすぐ喰われるだろうし、弱ってるとこ入り込むのなんて秋田さん得意そうだし。 ……つーなら、アレか。 俺も男と別れたばっかのとこ、つけ入ろうとしてんの、一緒か。 (いや待て、それはもういい) ガシガシと頭をかき、息を吐くと隣で、らしくない不安そうな声が聞こえた。 「疲れました?」 車を停めて、海岸沿いの岩場に座ってた俺の、表情を覗き込むようにして聞いてくる。 「違う」 短く答えて、隣に座った。 海に近くなると、乾燥しがちな秋でも肌にまとわりつくように湿気を感じる。 潮のにおいと、お前の髪から香る甘いにおいと、汗ばむような緊張と。 それを照らす、鮮やかな陽の色。 黄色くて、どことなく朱色で、見上げると暗みがかった青。 「早かったなぁ、今日」 「え?」
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