好きだ

19/26

7691人が本棚に入れています
本棚に追加
/337ページ
――『お前は?』 と、聞いてからの沈黙を。 その緊張を。 過去を思い返しながら待つ。 こんな思いを、俺に好きだと言ってきてた女は味わってたんだろうか。 やがて、聞こえてきた声は予想外のものだった。 「なに笑えない冗談言ってんですか、高瀬さん」 ……マジでこいつ、いつも俺の予想の範疇に存在しねぇな。 しかも真顔で、言うか。 「なんで俺がこんな笑えねぇ冗談言わなきゃならねーんだよ」 「だ、だって、高瀬さん」 「なんだよ」 声は徐々に小さく、そして頼りなくなっていく。 強さの裏にある、きっとこいつが隠したいであろう弱さや脆さが見える瞬間。 俺は、その一瞬が好きだったりする。
/337ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7691人が本棚に入れています
本棚に追加