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――『お前は?』
と、聞いてからの沈黙を。
その緊張を。
過去を思い返しながら待つ。 こんな思いを、俺に好きだと言ってきてた女は味わってたんだろうか。
やがて、聞こえてきた声は予想外のものだった。
「なに笑えない冗談言ってんですか、高瀬さん」
……マジでこいつ、いつも俺の予想の範疇に存在しねぇな。 しかも真顔で、言うか。
「なんで俺がこんな笑えねぇ冗談言わなきゃならねーんだよ」
「だ、だって、高瀬さん」
「なんだよ」
声は徐々に小さく、そして頼りなくなっていく。 強さの裏にある、きっとこいつが隠したいであろう弱さや脆さが見える瞬間。
俺は、その一瞬が好きだったりする。
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