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「た、高瀬さん……は、イケメンなくせに性格悪くて女にクズで最低だと、思って、て」
「……だろうな」
「実は本命は吉川さんで」
「マジで違う」
「かと思いきや、間宮香織にも手出してて」
「…………」
真剣に頭痛てぇ。
とりあえず、この俺へのイメージをどう上げてくんだ。 目の前に高すぎる壁が見えた気がした。
「登場してくる女の人が全部レベル高すぎて焦るのに高瀬さんの前ではダメなとこばっかり見せちゃうし、仕事は失敗ばっかりだし、彼氏にはフラれるし」
さすがに、この言葉が何に繋がるのか、わからない。ちょっとビビりながら俺は声の続きを待つ。
「いきなり、ここ最近ほんといきなり色んなことがあって、でもその度高瀬さんの優しいような優しくないような言葉で頑張ってこれた気がしてて」
「俺優しかったろ、最近は、多分」
「わかりにくかったりしますけど」
「そりゃ悪かったな」
「……私ね、素直になれたらなぁって、言いたいことを隠さず言えたらなぁって、ずっと思ってたんですよ昔から」
唐突な言葉に、不覚にも気の利いた反応が浮かばない。 石川は情けなさそうに眉を下げて言葉を続けた。
「でも、結局変わる努力する前に逃げ出すことばっかりで。 素直になりたいんじゃなくて、なろう、ならなきゃって思ったのは初めて……です」
少しずつ、目に涙が溜まっていく。
「意地っ張りで可愛くない私を、素直にさせてくれるのは高瀬さんだけなんですよ」
やがて涙は、溢れて。ひとすじ零れ落ちて。 俺は慌ててその涙に触れる。
お前何泣いてんだって、言ってやりたいはずなのに声にならない。
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