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と、言った高瀬さんと近くのスーパーにやって来た。
「………………」
「なんだよ」
昨日着てた服を着なおして、いつも綺麗にセンターで分かれてる前髪が乱れたままなのを邪魔そうにかきあげる仕草。
チラチラとカートを押しながら見ていると目があったので、隠しきれずに口元が緩む。
どうしよう、かっこいい。
ラフな雰囲気までもがかっこいい。
「え、いや、だってその」
「だから、なんだっつーの」
「高瀬さんとスーパーで買い物だなんて、なんか、その、彼氏彼女みたいっていうか恋人みたいっていうか、信じられないというか」
「はあ? 彼氏になったし恋人にもなったろ」
当たり前のように言われて、今度は口元が緩むだけではおさまらない。
ふふふ、と不気味に漏れ出た笑い声を聞いた高瀬さんは恥ずかしそうに顔をそらす。
「気持ち悪りぃ笑い方してんなよ」
「え、だって、なんか高瀬さんじゃないみたい」
「……そりゃ、会社で会うのと同じな訳ねーだろが」
不機嫌な声。
顔は見せてくれなくても、耳がちょっと赤いのが見える。
あの高瀬さんが、照れてる。
怒ってばかりで、人使い荒くて、私とは相性が悪いんだと思ってて。 でもイケメンでモテて仕事もできて。 実は別世界の人だと僻んだりもしてて。
そんな高瀬さんと、日曜日に並んで歩いてこんな会話してるなんて。
やっぱ今も少し信じられない。
だけど。
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