叶った恋の先

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「そ、そんな調子に乗らせるようなこと言っちゃダメです」 「なんで」 「やっぱこれ夢ですって言われた時に身が持ちません……」 バカじゃねーのって言いながらキスされた。 昨日から、たくさんたくさんキスをして。 こんなに幸せで、 こんなに信じられない気持ちで。 高瀬さんだけじゃないんですよ。 わかってください。 「高瀬さん私のこと舐めてますね」 「今度はなんだ」 「私の素直になれない性格って、筋金入りなんですよ」 「だからなに……」 「昨日も言ったけど、私前に進めたような気がしてたんです。 そんな恋って高瀬さんが初めてなんです」 ……ヤバいな、恥ずかしい。 言いながら頬が熱くて仕方ない。 素直に言うのは心地いいけど、やっぱり恥ずかしいし慣れないなぁと、しみじみ思う。 しん、と静まる部屋。 途切れてしまった会話。 だけど。 その静けさでさえもどこか甘く感じることができている。 絡み合う視線。 トクトクと鳴る心臓の音が聞かれてしまいそうな空間。 先に俯いたのは、高瀬さん。 口元を押さえたまま下を向いて、その顔は上がってこない。 「え、あれ? 高瀬さん、もしかして照れちゃってます?」 なんて、そんなわけないか。 って付け加えて笑ったら。 チラッと顔を上げた高瀬さんの顔が、ちょっと赤い。 「……くそ、お前のデレは極端だって」 「え!? ほんとに照れてた!? いやいやいやデレ具合の上昇は高瀬さんのが極端ですよ」 「うるせーよ、つーか今あんまり見るな」 「え!? やだ、嘘マジですか、ちょっと可愛い……」 不服そうに私を睨んできた。 でも顔が赤いから迫力ないの、わかってないですよね? 自然と声を出して、笑った。 じんわりと目尻に涙を感じるほどに笑った。 知らなかった高瀬さんを、たくさん知ったこの週末を。 きっと私は宝物みたいにして抱き締めてくんだろうな。 ――どうやら、本当に私の恋は実ったみたい。 1日かけて浸透してきた現実。 目尻に感じていた涙がひとすじ、頬を伝った。
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