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「おう、お疲れ。 特に何もなかったか?」
「……お疲れ様です、ないです」
私のデスクのまわりに集まる間宮香織や、それを取り囲む女子社員たちには目もくれず声をかけられて不覚にも。
……ちょっと、嬉しい。
なんて、悔しいな。
高瀬さんはこんな小さな事で嬉しがったりしないんだろうし。
髪をかきあげながら、腕時計に目を向ける仕草を眺めてドキドキしていると。
「た、高瀬さん、お疲れ様です~!」
間宮香織に群がっていたうちのひとりが、高瀬さんに声をかける。
「誰?」
「同じフロアに毎日いるじゃないですか、高瀬さん。 営業推進課の事務の皆さんですよ」
高瀬さんの冷たい言葉に固まった表情を見てしまって、私は思わず耳打ちでフォローする。
「で、何だよ」
「高瀬さん、言い方感じ悪いですよ」
「うるせーな、お前は何だよさっきから」
重そうなカバンをデスクの引き出しの前にドサっと置きながら軽く睨まれる。
しかし、推進課の皆さんは強かった。
「噂になってる、ついにできちゃった高瀬さんの彼女って間宮さんなんですか?」
「ふたりヨリ戻したってことですか?」
「高瀬さん、あんなに社内に女は作らないってバッサバサと告白してくる子、フリまくってたのに」
帰ってきた直後の質問責めに、さすがの高瀬さんも黙り込んでいると。
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