7691人が本棚に入れています
本棚に追加
/337ページ
「え?」
「石川さん、何か知ってるの?」
と、次々と怪しむ視線を投げかけられる。
ヤバい。
こんなの基本隠さなきゃ仕事、まわりも自分もやりにくくなるじゃんか。
何私は大人気なく会話に割って入ってんだ?
「……っ、し、知ってるような知らないような」
「どっちなのー!?」
一斉に注目が、間宮さんから私に移ってしまいガシッと肩を掴まれて揺さぶられていると。
「はいはい、みんな落ち着いて。高瀬の彼女はうちの会社にはいないからね」
穏やかな声が聞こえた。
「お、奥田さん!?」
「きゃ~! 奥田さんこの時間に戻ってるの珍しいですね!?」
「うん、今日は予定があってね。 みんなお疲れ様、間宮さんも悪ノリはやめようね?」
「……ちょっと俊平くんの彼女気分味わいたかっただけです~」
ウインクして誤魔化す間宮香織に、騙されたぁと脱力する女子たち。
「みんなが思ってるように高瀬は自分の仕事のリスクになるような恋愛はしないから、うちの会社とは全然関係ない人が相手だよ」
ええ~、と残念そうな声を上げながらも殺気立っていたテンションが落ち着いていく。
「だから彼女探しはやめて、ほら早く帰ろう? まだ月曜なんだから体力温存してね」
奥田さんは、そう言って。
ぽん、ぽん。 と、それぞれの背中に諭すように優しく触れる。
さっきまで鬼の形相で高瀬さんの彼女探しをしてたとは思えぬ程に、みんな瞳の奥にハートを宿して。
高瀬さんとは違うベクトルで女を殺す姿を眺めながら私は静かに思うのだ。
(恐るべし、マイナスイオン系イケメン……)
最初のコメントを投稿しよう!