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そんなこんなで奥田さんにうまく転がされながら、それぞれ追求を諦めて帰って行き。
そして。
シン……と。 ようやくフロアが静かになったと思ったらすぐに新たな会話が始まる。
「高瀬、お前って石川さんが絡むと本当に頭無回転の使えない男になるね」
「……あ?」
「今が伸びしろな石川さんの仕事の妨げにならず、尚且つ彼女の気持ちを最優先に考えて動く……んじゃなかったの?」
奥田さんがニッコリと目を細めて笑みを作ったまま高瀬さんに言う。
いやいや、妨げとか最優先とか何の話?
名前は出てるけど、さっぱり何の会話だかわからない。
「お前ならそれくらい、うまくやるだろうと思ってたけど」
「うるせーよ」
「まあ、そのうちバレるなら仕方ないけど隠せるうちは隠しといたほうがいいよ。 お前は虫除けになって良くても彼女が大変だよ」
「だから、うるせーって。 わかってんだよ、そんなこと」
「わかってなさそうだから言ってるんだよ」と。
肩をすくめる奥田さんにブツブツとなにか言い返しながら、高瀬さんがポケットからスマホを取り出して耳に当てる。
電話だろうか。
高瀬さんが少し輪から外れたところで、奥田さんが唐突に間宮香織に話しかけた。
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