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石川さん。って、小さな声、耳元で奥田さんの声がする。見上げると細く開かれた瞳。
「さっき、話そびれたんだけど」
「さっき?」
「うん、何でこんなに私たちのこと気にかけてくるんだろうって顔してたから」
ああ! と、声を出してまじまじと私は奥田さんを見上げた。
「やっぱ読まれてる!」
「あはは、もうそういうことにしとこうか」
私を見下ろしていた顔が、少しだけ空を見上げて、またすぐに視線を戻す。
そして。
「俺と高瀬の共通点は人を見下してるとこでね」
「…………え?」
高瀬さんはともかく、奥田さんが人を見下す?
「あはは、石川さんはほんとわかりやすくて可愛いね。俺は高瀬と違ってヘラヘラしてるから毒が見えないだけだよ」
「毒……」
「うん、そう。高瀬は特に女性を見下す部分が強かったね、まあモテるから自然とそうなったのかな」
「いやいや、モテてもあそこまで酷くない人、たくさん世の中にいますよ?」
一応彼氏な高瀬さんを全否定してみると奥田さんは珍しく、いつもは一定の弧を描く細められた瞳をパチパチと瞬かせた後。
ぶは! っと、大きく笑った。
「そうだね、そうだ。うん、高瀬はそんな君に会って変わっていった。俺はその変化を間近で見て君たち2人に凄く興味を持ってた」
「は、はあ??」
だからね、と。
呟いた奥田さんが、小さく息を吸って。
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