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――高瀬さんと2人、店の前に残されてしまった私は何となく気まずい。
だって、付き合いだしたとか言ったって週末のことだし。それに……
「お前なんで目合わせないんだよ」
「え?」
「こっち来いよ」と、真中に回されてた手に少し力が入った。
でも、恥ずかしくて顔が見れない。
「……ここ、来る前すみません」
「何が?」
「高瀬さんの、その、あれです……彼女。間宮さんじゃない、とか大声出したし」
ああ、と高瀬さんは相槌を打つ。
「事実違うし謝ることか?俺は嬉しかったけどな」
「でもホラ同じ課だしペアだし、周りの人のこと考えたらバレないのが1番仕事やりやすいのに」
「あ?バレたならバレたで別にいいだろ」
「でも働きにくいじゃないですか」
下を向いたままボソボソ話してると、固定されていた腕が離れ、かわりに大きな手のひらが私の手を包むように握って引っ張った。
引かれるように歩き出すと、私の手を包む高瀬さんの指が動いて、私の指に絡む。
触れ合う部分が、より多くて。
特別を感じる繋ぎ方。
そんな小さな事で、今の私の心臓はいつもより大きく脈打つんだ。
「あのなぁ、別に仕事ちゃんとして文句言わせないでいりゃいーだろが」
「……そうですよね」
「ま、自分から言いふらすことはないけど……なんつーかさ、俺のこと知られんの嫌みたいな言い方は、その、なんだ……堪えるからやめてくれ」
「そ、そんなんじゃないですよ!ただモテるし、高瀬さん……だから」
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