大嫌いの裏側で恋をする

一緒にその先を描こう①

「昨日な、見積もり送っておいてくれと。 田代さんがいなかったからお前に頼んでおいただろう」
「え？はい、送りましたよ」

基本課長の仕事は、ベテランの田代さんが担当してるけど。
昨日はお休みだったので私が頼まれた。

「そのデータは秋田くんところの、その更に上の支店長宛の見積もりだったわけだが」
「はい……」
「結論から言うと、送っちゃまずいデータをお前は送った」
「え！？」

課長のデスクの前に立って話を聞いていたのだけど、大きな声を出してしまって一瞬フロア全体から注目される。
その視線に「すみません」と小声で言いながら小さく頭を下げて課長の方を向き直す。

「お前に渡したデータ、いくつかページがあったろ。その中の見積もりデータを送れって言ったな俺は」
「……はい。そうです」
「システム変更に合わせて取引先の見直しも一斉に行ってるのは知ってるな？その関係で、同じフォルダの中に売上原価や粗利を計算したエクセルデータも入ってた。お前なあ、そっちを送った」
「……え」