一緒にその先を描こう①

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スマホの画面に触れる。 明るくなった画面の、その中の、電話のアイコンに触れて。 キーパッドを開いて。 ゆっくりと。 ぜろ、きゅう、ぜろ。 付箋に書かれた数字を、心の中で読み上げながら。 あの人の番号を撫でるようにして。 ねえ、 今のこんな私で、今のこんな心の中を。 ……高瀬さんに言える? 忙しい時に面倒だとか思われないかなとか、 それくらいで呼ぶなよとか、思われちゃったらどうしようって、言えないよね。 取り繕いたくなるよね、いつでも自分なりに精一杯、高水準な自分。 高瀬さんの中にいるであろう石川美波。 言えないよね。 好きで、大好きで、嫌われたくない恋が初めてなの。 怖くて、堪らない。
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