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「もともと君、華奢だけど更に痩せたんじゃない?太ったっていいんじゃない?」
「……どうも、ありがとうございます」
秋田さんがピザやサラダをお皿に盛って私の前に置く。
「す、すみません」
「いえいえ。営業だし独身だし手際ばっか良くなって嫌だよねえ」
苦笑する秋田さんを見ながら、小さく左右に首を振ってピザをひとくち。
「仕事大変?」
落ち着いたトーンで、ゆっくりと聞かれた。
「いえ、私じゃなかったら大変ではないと思います」
「そうなの?」
こくっと、小さく頷き続ける。
「まわりの女性陣からも面と向かって言われましたよ、仕事もできないし美人じゃないし釣り合ってないんだとか」
「おー、話飛んだね、高瀬くんとってこと?」
また、小さく頷く。
「それは、めげたくなるね」
秋田さんは、小さく口角を上げて笑う。
その言葉に驚くほど、私はホッとしてしまった。
そうだよ、めげたくなるよね。
って、まるで弱さを肯定されたみたいに思って。
なのに、なんでかな。
秋田さんのいる、目の前しか見えないみたいに身体が固まるんだ。
まるで、見渡しちゃダメみたいな気持ちになる。
踏ん張って地に足つけてた私が、
甘い毒に消されてくみたいだ。
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