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「……秋田さん、ごめん、なさい」
私の声を無視して、秋田さんは話す。
「俺、もう見たくないんだよね。その女も散々まわりに言われてたっけな、釣り合ってないとか」
「……秋田さん、止まって」
「嫌だよ、同じことを繰り返したいの?俺も思うよ、君と高瀬くんじゃ少しの悪意や作意に振り回されてばかりじゃないか」
秋田さんの気怠そうな、溜息が車内に響く。
ドクン、ドクン、と強く響く鼓動。
でもそれは、秋田さんを想ってじゃない。
そうだ。
今の私は高瀬さんの言葉を借りて『傲慢』だ。
2人で海沿いをドライブした、あの日。
不器用な言葉で高瀬さんは紡いだ。
好き。と、言葉にする重みを私は知ったじゃない、高瀬さんを想って。
ならば、高瀬さんもどれだけ迷って悩んで私に伝えたんだろう。
好き。を。
恋をすることで誰しもが持つであろう葛藤を、私は。
(まるで自分のものだけみたいに!)
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