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「秋田さん……!」
私の大声とは真逆。
車はゆっくりと停まった。
海沿いを走りながら、また戻って来てたのか。
景色は駅前。
人通り疎らな路地。
「どうしたの?俺としては、もう少しドライブしてからホテル行きたかったんだけど」
もう行っちゃう?って、からかうような笑み。
いつもならイラっとくるその笑顔も見ても、今日は自分が情けなくなるばかりだ。
「……秋田さん、私揺れました。あなたと高瀬さん天秤にかけました最低です」
「うん、別に最低じゃないよ」
「私!高瀬さんのこと好きなのに一緒にいるとダメな自分ばかり目立つんです」
「そうみたいだよね」
「それを、必死に隠さなきゃ幻滅されるかもしれないのに出来なくて嫌な態度とって、だけど」
助手席のシートベルトを外しながら、もう片方の手で私の頰に触れた秋田さんの手。
その手に力が込められ、私は彼を見上げる形で視線が絡む。
近づく唇と吐息。
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