一緒にその先を描こう②

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「た、高瀬、さん……!!!待って!」 ビルの自動ドアが開いて、でも高瀬さんは立ち止まって振り返った。 信号が変わって、走り出した私を見て驚いたように笑う。 その不器用な笑顔を、私は見失っては、いけなかったのに。 ほんと、何をしようと、してたんだ。 悔しい。情けない。こんな自分大嫌い。 大嫌いだけど、でも、でも知って。そんな私を、どうか受け止めてほしいと。 勝手な願い。 そして、諦めた方が楽な恋を、諦められない覚悟。 こっちを見て、多分「石川?」って私の名前を呼んでくれてる。 「高瀬さん……!」 その、驚いたように私を見る姿へと駆けて、抱きついた。 スーツの少し固い布の感触。タバコのにおい。 それを吸い込んで。 声にかえる。 「高瀬さん……ご、ごめんなさい、でもやっぱ好きで、私」 心から流れ出てしまったのは、何一つキレイに纏まらない、頼りない謝罪と告白だ。 「……ちょ、ちょっと待て何だ、お前どうした?」 見下ろして、まるで私の表情を確かめるように前髪をかきあげ、 目を合わせる。 「す、すみません、あの私」 しっかりと視線が絡まって、私はとりあえず、また謝った。 バクバクと心臓の動きを感じて。 (な、なにからどう話そうとしてたんだっけ?) 心の中の声は戸惑ってる。 だからやっぱり、声になったのは高瀬さんにとって突拍子も無いものだった。 「あ、あの、美咲が、結婚するんです」 「…………は?みさき?」 「はい! だから……その、親が、うるさくて」 「親?誰の?」 勢いよく走ってきたわりに小さな声。 つられてか、それとも状況を把握できてないのか。高瀬さんも小さな声。 それでもって、意味がわからないって、戸惑いの顔。
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