一緒にその先を描こう②

12/23
前へ
/337ページ
次へ
「全部把握しときてぇんだよ、お前のこと」 唸った後に、絞り出すよう、聞こえた声。 その声に私の心臓は驚くほどに跳ね上がった。 「……え、っと」 「秋田さんと、いや、限らず。何話して……とか、何考えてとか。そーゆうの、なんつーか全部」 歯切れの悪い言葉。 脳裏には、気まずかった、少し前の電車での帰り道とか。浮かんでくるものがあって。 私の中でモヤモヤと浮かんでは消えるものがあったように、あったんだ。 高瀬さんにもあったんだ。 「大丈夫なんだ……」 「え?」 ポツリと、溢れた私の声に。 次は高瀬さんが反応を見せる。 「モヤモヤしてても、大丈夫なんだ。た、高瀬さんも一緒なんだ」 「何が?」 「釣り合ってないなぁとか、なのに、高瀬さんのいるずっと先の未来を実は願ってる自分とか。もう、私自分の脳内が意味わからなくて」 じわりと、目が熱くなる。 嫌だ、今泣くなんてズルいのに。 ズルいのに、ズルい私だって私なんだ、わかってよって。 心の奥の方で聞こえる声を、無視できない。 いっぱい溜まった涙が、流れずに何とか止まってくれてるけど。 そこに、高瀬さんの指が触れる。 優しく優しく、触れてくれる。 すると、誘われるように大粒の涙が零れ落ちた。 「や、ヤキモチとか奇跡じゃないですか。嬉しくてお花畑案件じゃないですか」 「嬉しいのかよ」 「好きな人の、そ、そんなの。嬉しくない訳ないし」 「言ったな、お前。言質とったぞ」 「ちょっと!怖いです怖い」 笑う私に、ニヤリと悪そうに笑った、高瀬さん。 その指は、また優しく熱く私の頬を撫でる。 そして小さく息を吸い込んだ後、高瀬さんが発した声は暖かさをまとっていた。
/337ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7694人が本棚に入れています
本棚に追加