7694人が本棚に入れています
本棚に追加
「まーでも、ここが今伸び時だって判断されたんだよ、ってことで、大丈夫だ。俺もいるしな」
大丈夫だ。と、高瀬さんが言葉にしてくれると、こんなにも大丈夫に思えて。
こんなにも勇気になるのかと。
ただ頷きながら実感している私を、抱きしめる腕の力はまだ弱まらない。
「んで、俺の方だけど……悪かった、お前を不安にさせたのは俺がお前をうまく繋ぎとめれてなかったせいだし」
耳元で、ふぅ、と。深く息を吐いて吸う音が聞こえる。
「……秋田さんは、部屋も取ってお前次第だって思ってたみたいだし。それでも自分で選んで、俺のとこ来たんだろ」
まるで褒められてるみたいに声に、どうしようもなく心臓がギュッと苦しくなってしまう。
「秋田さんは多分初めから気付かせてくれようと、してたと思うんです」
「気付かせる?」
「高瀬さんの好きな私って、会社で見てた私でしょ?それを維持したくて、できなくて首絞めてる私を秋田さんは不憫に思っただけで!」
高瀬さんの腕の中から逃れようと力を入れても、動けなくて。
力強い、その中で、また優しい声を、私は聞いた。
「アホか。そりゃキッカケは会社でのお前かもだけど、違うだろ今は」
「今は?」
「あ?当たり前だろ、今は惚れてんだから。そりゃどの角度のお前も可愛いよ」
(な、なんというか!)
今日の高瀬さんは、優しすぎて調子が狂う。
「可愛いとか……」
「可愛いだろが。お前に喧嘩ふっかけてくる女とか鼻で笑ってろよ」
「いや、私そんなしぶとくなれないです」
「なれよ。お前らが騒いでる男、私にベタ惚れですよーって笑ってろ」
あっけらかんと、高瀬さんが言うから。
私は言葉を飲み込んで、いっきに体温が上がってしまう。
そんな熱には、きっと気付いてない高瀬さんが抱きしめる腕の力を弱めて距離を取る。
ジッと私を見て、静かに言った。
最初のコメントを投稿しよう!