一緒にその先を描こう②

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ピンポーン、と。 インターホンが来客を知らせた。 そのカメラ画面を確認することもなく、お母さんは嬉しそうな声を響かせる。 「あ、ぺぇ君かしらね!? ほらお父さん出て!」 はいはい、とお父さんが玄関に向かう。 今日は久々にみんなで食事でも!って。 お母さんが張り切って、私や美咲、そして。 「どーも、お邪魔します」 高瀬さんを呼んで。 「あら、ぺぇ君今日もイケメンねぇ」 「あ、マジっすか、お邪魔します」 もはや、イケメンと言われすぎて高瀬さんの中で挨拶と化してしまってる。 そんなお母さんと高瀬さんのやりとりに、ひっそりと口元を緩ませながら。 私は高瀬さんの元に駆け寄った。 「高瀬さん、1人で来させてすみません。お母さんに手伝えって先に呼ばれてて」 「ああ、いーよ、別に」 いつかの宣言通り、嬉しそうに丸め込まれてくれて。 当たり前みたいに、この場にいる高瀬さんは。 高瀬さんとの恋や、これまでの道のりは。 決して当たり前なんかじゃなくて。 「んで、何だっけ。 さっき再来週の予定がどーのこーの言われたけど」 「あーー! もう、それも。 お母さん勝手にやめてよね、いつも」 「ぺぇ君、この子に任せてたら何も進まないからしっかり引っ張ってやってちょうだいね!」 「だから口挟まないでってば!」 賑やかな声と空気の中、思うんだ。 まだ何も気付けてないだろう、あの頃の私に伝えてあげたい。 あなたの心の中にある、憂鬱も恐れも。 潜んでる心の奥の弱さも。 どうか、見失わないで見つけてあげてね、と。 全部まとめて抱きしめてくれる人が現れるからねって。 教えて、あげたい。 ――大嫌いの裏側に隠れてた小さな恋を。 そして、育んできた、そんな恋心に。 未来のあなたはこんなにも、愛されているよと。
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