番外編

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奥田はタバコの火を消して、コーヒーを一口。 笑いを堪えるように飲んでから言った。 「ははは、何。 向こう、今更会いたがってるの?」 「みたいだな」 「へえ、それはまた。 挙句、時期悪く月末だったから大好きな石川さんに相手してもらって安心もできずか、可哀想に」 「可哀想に可哀想にってなぁ、思ってもねぇこと言うな」と、さすがに腹が立って蹴りを入れる。 「単純に、彼女に未練あるんじゃないの」 「まぁな。 そーいやお前どうなの、女が置いてたった荷物とか返すの? 捨てんのか?」 「あ、それ口実に会おうとしてる感じなんだ。へー、高瀬はどうだったの?」 うーん、と視線を上げて考えてみるが。 「わかんねー。 そもそも置いて帰らせたことねぇな、付き合ってるつもりなかったし」 「ははは、刺されたらいいのに。 俺は、そうだなぁ。言われたとおりにしたかな。 あ、でも大体いい別れ方してないし。 もう会いたくないから捨ててって言われてたかも」 「いや、お前も刺されろって」 不毛な言い争いだ。 「ま、仕事落ち着いたら石川さんと話しなよ。 彼女は会う気なさそうなんだろ?」 「当たり前だろ、会う気あったら……」 「お前がこんなところで呑気にタバコ吸ってないね」 大体図星なもんだから、舌打ちで返す。 「あ、俺今日は飲みに付き合えないから。 予定あるし」 「俺も明日出るつもりだから帰るし。 つーか、何? 女でもできたか」 「どうかな」 答える気のない笑顔で言って、ヒラヒラと手を振りながら奥田は出て行った。
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