番外編

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あのあと『迎えに行くわ』と短く返し、車を走らせ会社に向かう俺のスマホに『ごめんなさい、やっぱ月曜の用意だけしてから会社出るんで少し遅くなります』とメッセージが届いた。 (どっかで時間潰しとくか) 社用車は、確か誰も乗って帰ってないからビルの駐車場は停める場所がないだろうし。 オフィス街のコンビニに停めることも、もちろんできない。 仕方ない、と近くのパーキングに車を入れてコンビニに立ち寄った。 コーヒーを買い、店を出てタバコを取り出す。夕方も5時を過ぎれば暗くなってきて、街の街灯が目立ち始めた。 それをボーッと眺めて軽くふかしていると「あのー」と遠慮がちな声が聞こえてきた。 その声の方を見ると、知らない女が2人。 「俺?」 見覚えがない奴らだ。自分の方を指差して聞いてみると、キャーキャーと手を取り合って大袈裟に頷く。そこそこうるさい。 「はい!あの、私たち、そこのビルの2階で働いてて……! 7階の会社の人ですよね?」 「……そうだけど」 (階も全然違うのにそりゃ知らねぇっての。なんだ、こいつら) 「た、たまにエレベーターとか、このコンビニで会ってたんですけど……わ、私のこと知ってますか?」 2人のうちの1人が、長い髪を耳にかけながら、妙にぱちぱちと瞬き多く見上げてくる。 読みがはずれてなきゃ、多分キメ顔なんだろうと思う。この女が男落とす時の。 「いや、すいません。わかんねーです」 「あ!そうですよね、こちらこそ、すみません……。あの、よかったら連絡先とか教えてもらえないですか?ずっと話しかけてみたかったんです」 「いや……」 (まあ、そーだろな) 突然声掛けられんのは大体これだ。見下ろすと化粧は濃いけど、それが映える顔立ちをしているように思う。派手な美人は、遊ぶ相手としてはまあまあ好みだった。 そんなもんだから、ちょっと前なら「いーよ」と答えて誘いに乗ったりもしてたんだろうか。
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