番外編

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好きな女の口から、まあ、褒められたもんじゃないこれまでの行動を言葉にされると返せるセリフが本気で限られすぎている。 ヒヤヒヤと言い訳をしている自分が情けないけど、こればかりは仕方ない。 恨むなら過去の自分だろう。 「怪しい〜」 「あのなぁ……」 苦し紛れに、若干の話題変更を試みる。 「だったらお前はどうなんだっつーの」 「はい?」 「前の男と会ったりしてんじゃねぇの? 連絡も取り合ってるし、最近忙しいアピールしやがって」 しかし、それが失敗だったと気がつく。口にしてしまったなら、本気で心の中に引っかかっていたことなわけだから。程よくとどまってくれるわけもなく。 つい、余計な一言が、売り言葉に買い言葉。まさにその言葉通り喉を通り抜け声になってしまった。 「アピール……」 (……まあ、そうなるだろ) 極限まで低くしました的な声が、聞こえてきてしまった。 「待て、取り消す」 「そんなこと思ってたんですか」 「だから、違う、取り消す。悪かった」 「車停めてくれませんか、降ります」 (ヤバい……ガチだろ、詰んだ) 完全に怒ってる。しかもギャンギャン声を張ってない。静かに怒ってる時は、レベルでいえば最高潮にヤバい時だ。 とにかく、ヤバい。 「……悪いけど無理。家帰って話す、言い方間違えたから」 「話したくないです、高瀬さんの家も行きたくない」 まずいな、と。路肩に一旦車を停めた。 気の強さも、もちろん可愛いが、こうなると若干扱いに困る部分がある……今はまだ。
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