番外編

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「おう、だからヘマしねぇために、お前今絡まれてんだよ、俺に」 胸ぐらを掴んで立ち上がらせてやってから「残念だったなぁ」と、煽るように言ってやる。 「ま、あいつどーにかしたいってんなら、俺を黙らせてからにしろよ」 言い終わり、掴んでいた胸元を離し。一発壁でも殴って気分落ち着かせるか……って拳作ったところで。 「ぎゃあ! ダメダメ! 殴るのはさすがにストップ! ダメですって高瀬さん……!」 と、横から慌てたように叫ぶ声が割り込んできた。 ぎゃあ、とか。マジで、どっから声出してんだ。 相変わらず…… 「色気ねぇ奴だな」 「はいぃ!? 今必要ありますか、それ!」 次はぎゃんぎゃん吠えながら、俺たちの元へと駆け寄ってきた。 「あるだろ。男が二人お前の為にやり合ってるっつーのに」 「……高瀬さんが超一方的にボコってる図的な」 「あ?」 「てか、悠介大丈夫なの? なんで突然来たりなんか……」 膝に手を当てながらゆっくりと立ち上がる悠介に目を向けた石川は、心配そうな声を出す。 若干イラッとしながらも、ここは一応少しばかりの余裕を見せ、黙って見守っていたいところだ。 ――これでも歳上で、これでも職場では上司で、これでも少しくらいプライドが残ってる、はずだ。 「……ごめん、急に来て」 「や、いいんだけどさ。何、彼女と別れたって」 向き合う二人を横目に、蹴り飛ばした悠介の自転車を取りに行った。 もちろん聞き耳を立てながらなわけで……。   こいつはまた何で別れる原因になった女とのアレソレを心配してやってんだよ。 と、言いたいが堪える。 げんなりと肩を落としながら、チャリ片手にやはりまた聞き耳を立てた。 「……ごめん、美波に関係ないことだったのに」 「ああ、違う。責めてるんじゃないよ、ただ、私はもうそれを聞いても悠介に何もしてあげられないんだよ」 「うん」 「別れるって、そうゆうことだよ」 やけに冷静にあいつが話すもんだから、どうにも疑問が浮かんでくる。
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