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その時、デスクの端の方でスマホが震えた。
悠介からのメッセージだ。
珍しく、私から連絡しなかったからなのか向こうからお伺いがきた。
――何時頃になる?
それに対して、今日は無理かもと返事を入力していると乱暴に扉が開かれた。
「お前、まだいたのか」
ほんのりとタバコの匂いが残って、いつもはセンターで分けられて整えられてる髪の毛も、無造作な前髪。
ネクタイは緩められてて、普段見えない胸元が少し見える。
……そして、疲れた顔を、している。
「高瀬さん、その、今日はすみませんでした!!」
駆け寄り、思い切り頭を下げる。
数秒経っても何も言ってくれない。
更に頭を下げ続ける。
「おい、気持ち悪いから顔上げろ」
「……は?」
素直に頭を下げてるのに、何その言い方。
いやでも待って、それ程怒ってるのかも。
だって、週末だし。
彼女……とかと予定あったのかもしれないし。
「納期も内容もややこしかったのに適当な指示出したのは俺だ。 お前だけが悪いんじゃない」
「いや、でも」
「いつもクソほど仕事まわしてんだ、ミスの責任くらい俺が走って当たり前だろ」
あんぐりと口を開け、目の前の男を眺める。
「あと、悪りぃな、面倒なもん押し付けたけど、お前わかんなかったろ」
「す、すみません……ほとんど進めれてないです」
「いいよ、適当に何件かやって俺帰るから、お前も帰れ」
帰れませんよ!! と喚く私の頭を撫でた。
わしゃわしゃと、とても、乱暴に撫で続けるから髪の毛ボサボサだし。
でも、その手が妙に優しく感じるの。
罪悪感から?
「さっき吉川から連絡きた。 約束あんだろ? 男と」
「……!!??」
ニヤニヤと笑って、カバン取ってこいって顎でしゃくる。
「まぁ、せいぜいイチャこいて月曜はせっせと働いてくれよ」
そんな捨て台詞とともに追い出されるように締め出されてしまった。
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