第3章 偽解放者の側近で

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 ただ、そのことを長井が明かすことはないだろうし、ここでその話題が上がることもない。 「ちなみに、今後、彼のことを手伝うということですが……、具体的な話は聞いていますか?」  圭はその言葉に対し、ああと思いながらガラケーを田村の前に出した。電話帳から登録された長井の電話番号を見せた。 「まだ具体的な話は聞いていません。俺に何をしてもらうかは、これから考えるらしいです。で、またこの連絡先から電話が来ることになっています」 「そうですか。まぁ、話としてはこれからということですね」  それなりに満足しているというように、笑みを浮かべる田村。実際、さぞかし自分は田村の思惑通り動いていることなのだろう。  そこで、一応次の質問をしてみた。 「ところで、先輩の目的って、これで達成したことになりませんか?」  この回答がどうであれ、圭の行動が変わることはない。だが、これに対して田村はどう思っているのか……。  無論、この圭と田村の関係は、互いに嘘を付き合っている間柄である以上、考察の一要素でしかないが。 「解放者を名乗る彼らの目的を確かめるという目的のことですか? それに関しては、まだ完全に解明されたわけではありませんけどね」     
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