第1羽 まだ飛べない鳥

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 穴があったら入りたい。僕は今、心からそう思っている。いつの間にか現れた背のひょろ長い男の……おそらく先輩であろう人との間で膠着状態が続いていた。さっき話かけられて以来、黙っている。僕はどうしたらいいかわからず固まっていた。一方、相手のほうはこちらを見てニコニコと笑っている。どういう意味の笑みなのかまったく読み取れない。 「君、部活入ってる?」  先輩は言った。変わらず微笑している。僕は突然のことで内容を理解するのに少し時間がかかった。 「は、入ってないです……」  僕の声はびびっている上に掠れていた。 「じゃあ、うちの部に入らない? あ、まずは見学してもらおうか」  先輩は一人で勝手に話を進めていく。そして、手招きしてマイペースに歩き出した。断る間も与えられず、仕方なく後をついて行くしかなかった。部活勧誘なんて中学の時も一度もされなかったので、正直どぎまぎしている。そもそも何でこうなったのだろうか。さっきの一言を思い出した。  ―いいフォームしてるね。  言葉の意味を逡巡する。フォームを気にする部活っていったら運動部だよな。そういえば靴を投げつけているところを見られたんだった。投げるスポーツはもしかして……野球部! 期待に胸を躍らせていると、中庭で先輩が立ち止まった。 「紹介するね。これが僕たちの部活」  先輩の背後には、色とりどりの物体を投げている十数人の生徒たち。いや、投げているというより飛ばしていると言ったほうがいいだろう。 手にあるものは 「紙ヒコーキ部だよ」
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