第3羽 ただただ墜ちていく

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 深い眠りから目覚めた感覚があった。体がものすごくだるい。鼻の奥に水が溜っているような感じがする。心なしか頭の方が湿っている気がする。髪に触れてみると、やっぱり湿っている。体は何かに包まれているが冷たく、やはり湿っている。至るところ全てが湿っている。指先で冷たさを享受しながら、プールで溺れた時のことを思い出した。落ち着いて記憶を辿ってみると、誰かに呼びかけられていたのをぼんやりと思い出した。助けてくれた人がいた、のだろうか? ようやく周りを見渡すと、どうやら僕はベッドに寝かされているようだ。たぶんここは保健室なんだろう。そんなことを考えていると、隣から話し声が聞こえてきた。 「部長」  海子さんの声だ。部長と一緒らしい。 「大丈夫ですか?」 「大丈夫。ちょっと疲れただけだから」 「無理しないでください。何で走ったりしたんですか?」 「だって小野君死んじゃうかと思って」 「だからって背負って走ったらあなたが死ぬでしょ!」  会話の意味が一瞬で察知できた。僕を助けてくれたのは部長で、僕のせいで体調悪くなっちゃったんだ。迷惑かけた……。自分を呪いたかった。海子さんの口調から事の重大さが伝わってきた。怖くなった。ただただ震えた。寒さのせいじゃない。自分が今ここにいるせいだ。誰かといたら迷惑がかかる。一人に……ならなきゃ。     
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