あなたへ贈る

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「たじゃいまー。」 「はい、おかえりー!」 今日は娘を迎えに行き、久しぶりに一緒に帰宅してきた。 「お母さんにはこれ、しーっ…内緒ね。」 「ないちょ!」 父と娘は顔を見合わせて、にこにこと笑う。 「ただいま…」 「にいに!おかいりー!」 「おかえり!息子よ!」 帰ってきた長男に、妹と父親は玄関まで出迎えに行く。 「ん?親父、今日早いね。母さんは?」 「母さんは友達とお出かけ!さぁ、着替えたら手伝って!」 「…今日って何の日だっけ?母さんの誕生日じゃないよね?」 疑問に思う兄の腕を引っ張り、妹はしーっと人差し指をたてて答える。 「にいに!ないちょなの!」 「??」 「ただいま。ごめん、遅くなったわね。今からご飯を…」 「おかえりー!」「おかいり!」「おかえり」 リビングで同時に3人が母の帰宅に返事をする。 「あら?みんな早いわね。」 「ちぇーの」 「いつもありがとう!」「あんがとー」「…ありがとう」 ばらばらになりながらも、3人の手には黄色い花が握られていた。 それらを受け取りながら、旦那に尋ねる。 「今日って、母の日じゃないわよ?」 「今日はイタリアのミモザの日なんだ。男性から女性へ日頃の感謝を伝える日だよ。」 「…それで子どもたちを巻き込んだのね。」 「みんなでやる方がおもしろいだろう?」 ドヤ顔で、にかっと笑う旦那にいつもクールな妻が、くすっと笑う。 「あなたのそういうところ、本当に飽きないわね。」 「さぁ、ご飯にしようか。今日は二人も手伝ってくれたんだよ!」 翌朝の朝食は、ふわふわに炒った黄色い卵ののったトースト。 「きのおの、おはにゃみたい!」 「ほんとだねー。」 旦那と娘が、笑顔でトーストにかぶりつく。息子の弁当にも、昨日の花のようなふわふわの黄色い卵を入れてある。 「…昨日のお礼よ。」 照れた妻からのステキなお返し。 今日も我が家は平和です。
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