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やがて、そんなもどかしい高校生活も3年目を迎え、間もなく終わりを遂げようとしていた。
卒業式の朝、俺は何故だかいつもより早く起きてしまいいつもより早く教室へと着いてしまう。
誰もいない教室。
思わず俺は、大好きな天王洲の席へと腰を降ろす。
「清瀬?」
その瞬間、その席の主から声を掛けられる。
「天王洲!」
ハッとして、急いで席から立ち上がった。
「えっと、これは……その……」
気まずさと恥ずかしさから、咄嗟に誤魔化そうとするも良い言葉が思い付かない。
「清瀬は、春からどこの大学へ行くの?」
6年前と変わらず、相変わらず優しく眩しい笑顔が俺へと向けられた。
会話を交わしていなかったこの何年間が嘘のような、あの日を彷彿するような穏やかな空気がそこにあった。
「地元の大学だよ。清瀬は、有名なプロのサッカーチームに入団するんだってね。おめでとう……」
12年間一緒だった俺たちの関係が、本日をもって終わってしまう事実に、何とも言えない気持ちとなった。
「ありがとう。夢だった、サッカー選手になれるんだ」
「試合、見に行くよ」
「本当か?……嬉しいよ。インハイの時も、清瀬……見に来てくれなかったから……淋しかったんだ」
どことなく憂いを帯びた表情に、俺の胸がツキリと痛む。
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