プロローグ

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俺の初恋は、小学校からずっと同じクラスのアイツだった。 すれ違う度に、太陽の香りが鼻を掠める感覚が“ぼっち”の俺にはとても眩しかった。 アイツは、底無しに明るく元気で健康的な男だった。 ずっと一緒のクラス。 12年間、同じ教室の空気を吸っているだけ。 共通点は、それと1回きりの会話のみ。 たったそれだけの奇跡的な繋がりだけが、友達のいない俺を孤独という感覚から脱し、優越感へと浸らせていた。 サッカーが上手くて恰好良いクラスの人気者。 いつも、アイツの周囲には沢山の人集りができていて、友達のいない俺には太陽のような憧れの存在だった。 そんなアイツに恋心を抱いたのは、中学1年生の頃。 クラスで存在感の薄い暗い俺に、面倒な学級委員長という大役が押し付けられた時だった。 そんなアイツの名は、天王洲悠慎(てんのうずゆうしん)。 皆からは、『ゆうしん』と親しみを込めて名前で呼ばれていた。
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