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「はぁ」
太陽の様な男からの呼び掛けに、どう返答して良いか困惑し、自分が思っていたより間抜けな声が出てしまう。
俺の声って、こんな声なんだ……
中途半端な変な声……
普段、教室に居る時は誰とも言葉を交わすことが無いため、声変わり途中の中途半端な声を家族以外の会話で客観的に知る。
「何やってんの?帰らないの?」
「……学級委員長の……仕事、なんだ……」
屈託の無い眩しすぎる笑みで爽やかに問い掛けられた俺は、男の大きな声と反してポツリポツリと小声で答える。
「早速、学級委員長としての仕事かぁ。やっぱり清瀬は、責任感があって偉いな」
サラリと俺を悪意無く褒め、しおりの1部を手に取り、目を通し始める。
「あ!ちょっと!まだ中身見ちゃダメなんだって!担任が言ってた!!」
今週の金曜日のホームルームまでは、まだ遠足の内容を口外しないよう口止めされていた俺は、慌ててその手を止めようと男の腕を掴む。
「あはは。心配性だな、清瀬は。……俺は、そんなに口……軽くないぜ?」
精悍な顔立ちの男は、茶目っ気たっぷりに片目を瞑っておどけてみせる。
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