中学時代、放課後

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「でも……!」 目の前の男を信じない訳ではない。 しかし、学級委員長としての(めい)を全うしようとする俺は、目の前の男からしおりを取り返そうと必死で全身を大きく動かし奪い返そうとする。 「ちょっと、返せよ!」 俺が戸惑う様子を、楽しそうに弄ぶ男に、自然と苛立ちを覚えてくる。 普段、他者との関わりが無いため、こんなじゃれ合いはなれていない。 そう悟った瞬間、男は不意に態度を変えた。 「……だったら、これは俺と清瀬だけの『秘密』にしようぜ……」 唐突に、低く真面目な声色で話し始める。 「え……?」 妙な緊張感と共に、訪れる沈黙。 “秘密”という、何とも言えない甘酸っぱい背徳感。 そして、真剣な表情で俺のことを見つめる男の蜜色の瞳。 「ほら、俺も手伝うから。1人でやってたら、日が暮れちまうぞ」 男は俺が座っていた席の隣へ不意に腰を降ろす。 「……」 机の上に置いてあった予備のホチキスを手に取ると、まだ手付かずの紙の束へと手を伸ばした。 何故、男が“秘密”を作ってまで手伝ってくれるのか、俺はその真意がつかめず凝視する。 「……どうした?」 「……あ、部活は大丈夫なのかなと思って……」 勇気が無くストレートに「何故、手伝ってくれるのか?」と聞けず、俺は遠回しに相手の真意を探ってしまう。
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