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「大丈夫。まだ、仮入部の期間だから」
キラキラした笑顔が、俺には別次元の人間に見えてとても眩しかった。
「……ありがとう。助かるよ」
溢れ出る神々しいオーラを俺は直視できず、視線をわざとずらしながら感謝の言葉を独り言のように呟く。
黙々と作業に打ち込んでいた2人は、特に会話を交わすことなかった。
しかし、気まずい空気になることもなく、穏やかな空気だけがそこには漂っていた。
「……これで、最後の1部だな」
教室にある、大きな掛け時計を見ると夕方の5時を指していた。
机の上に積まれた、何百部という完成されたしおりが時間の経過を物語っていた。
「ありがとう、天王洲。後は、俺が職員室に持っていくから大丈夫だよ」
不思議と、俺は緊張することなく自然と会話することができた。
「……やっと、俺のこと顔を見て名前で呼んでくれたな」
屈託ない彼の笑顔に、思わず俺は胸が大きく脈打つ。
「……え?」
「俺たち、ずっと小学生の頃からクラス一緒だろ?それなのに、いつも清瀬は赤の他人のような、俺に話し掛けられたくないような顔してるからさ。俺、嫌われてるんだと思って悲しくて」
まさか、クラスの人気者が俺に対してそんな風に思っていたことが信じられず、驚愕した。
「……そんなこと、ない……」
信じられない驚きから言葉がなかなか出ず、何とか声を振り絞って呟く。
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