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「そしたら、魔王は言ったんだ。『彼女が王女だったとは知らなかった。調べも、家族に挨拶もせず、妻として娶った私にも非があったのか。君のおかげで理由を知れた。君の真摯に誠実で応えよう。これで終わりだ』……」
きっと一言一句違わぬ言葉。
「そして、自ら首を落としたんだ」
その言葉も、その光景も忘れられないのだろう。
この人は優しい人だから。会って間もなくても、それだけはわかる。
だけど、いや、だから、納得がいった。
この人だから、父様は死を選んだのだ。
思えば酷い話だ。
娘の私に事情も説明せずに自決するなんて。
だけど私の魔族の血は、それが魔族なのだと告げている。
三倍にして返すはずだったあの時の感情は今やない。ないものは三倍してもないままだ。
「ねぇ、私からもお願いがあるの」
私は包丁を机において、まだ扉にいる村人たちに声をかける。
殺してあげた方がノアも楽かもしれない。
でも、父様のせいで彼を絶望のままに死なせたくはない。
彼には沢山の優しさをもらったから。
「私を殺すのは、ノアに本当の笑顔が戻ってからにしてくれないかしら?」
私は、私以上に父様の死を悼む彼を、抱き締めた。
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