4人が本棚に入れています
本棚に追加
◆
良い香りが鼻をくすぐる。
「父様、今日の朝ごはんはなぁに?」
目を閉じたまま声をかける。
寝返りを打って違和感を感じ、我に返って飛び起きた。
そこは見知らぬ部屋のベッドの上。
ふらつく足で隣の部屋を覗けば、あの時の青年が鍋をかき混ぜている。
私がもう少し扉を開けると、キィと音がして彼が振り返った。
「目が覚めて良かった。もうすぐスープができるから」
彼はニコリと微笑んだ。
促されるままに席に座り、差し出されたスープを凝視する。
「あ、魔族はこういうの食べないのかな?姿が似ているからてっきり食べるものだと……」
「いえ、頂くわ」
彼が恥ずかしそうにお皿を下げようとしたので、その手を止めてスプーンで一口すする。
「……美味しい」
「良かった!味覚も僕らとあまり変わらないのかな」
彼はそう言いながら、自分の分をよそるために私に背を向け、振り返って慌てだした。
最初のコメントを投稿しよう!