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「ノア!出てこい!魔王の娘がここにいるだろう!」
けたたましく玄関の戸が叩かれ、怒鳴り声が響く。
「ミアはここにいて」
ちょうど食事をしていた私は立ち上がったが、ノアに肩を押されて椅子に座りなおす。
ノアが私を家に残したまま外に出る。
一瞬見えた扉の向こうには、手に手に武器を持つ村人たちが集まっていた。
「彼女は魔王の娘では……」
「俺は見たんだ!窓から見えたんだ!あの角は俺から腕を奪った魔王そのものだった!」
「お前が一番わかっているだろう!」
「落ち着いて……」
「たとえお前でも、魔王の娘を庇うなんて許さないぞ!」
「息子を」「夫を」「兄弟を」そして「父を」。人々の怒りが扉を通して押し寄せる。
先に矛を向けたのはお前たちではないか。
そう怒鳴り返したって良かったのだが、あいにく、大切な人を奪われた心境がわかってしまうから、私はその怒りを受け入れてしまった。
そもそも魔族の世界では弱肉強食が当たり前。走れるほどしか回復していない私には何もできない。
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