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私の命もここまで。
そう容認するのに時間はかからず、ノアが扉の隙間から私を伺い、私は諦めた笑みを返した。
「わかりました」
ノアが大きく扉を開け、私は立ち上がる。
村人たちは怯えてかすぐには入って来ず、ノアだけが村人から借りたらしき包丁を持って近付いてきた。
当然だ。
私が何もできないことを彼は知っているのだから。
私の目の前まで来ると、彼は村人に向けて言った。
「一つ、お願いがあります」
彼は持っていた包丁の柄を私に握らせ、
「彼女を殺すのは、彼女が、彼女の父親を殺した僕を、殺してからにしてください」
その切先を自身の心臓の位置に当てた。
「何を馬鹿な事を!」
「皆さんが復讐を果たせるのに、彼女が復讐を果たせないのはおかしいでしょ?」
ノアは何を言っているのか。
彼が呆然とする私に向き直り、ポケットから角の先端を取り出した。
それはまさしく父様の角だった。
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