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 一方花柳龍の店内では柳原が胸を張って清を待っていた。 「柳原さん、情けをかけることなんてないのに」  高橋が渋い顔をしている。 「なあに大丈夫ですって。敵に塩を送るってのも粋なもんでしょ」  柳原が堂々と応じた。 「それにしても、何してるんでしょうな」 「負けの言い訳でも考えてるんですよ」 「あと二分ですよ。ちょっと様子を見てみましょう」  店内の一同が入口に集まった。清が立っていたところには相変わらず人影らしいものがある。 「清さん、どういしたんですかい。開けますよ」  高橋がガラリと引き戸を開ける。  そこには黒縁の丸眼鏡をかけた食い倒れ人形そっくりなラーメンが立っていた。  例の蛇含錠。消化薬ではなく、実は人を溶かす薬だったというヒトを食ったオハナシ。
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