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「魂消たなあ」
「驚きですな……あんな人がいるとは」
「三十分どころか、二十分で食っちゃいましたぜ」
「柳原さん、私が嗾けたばっかりに申し訳ない」
高橋が下げた頭に電灯の光がゆらりと映り込む。
「いやいや、私だって、まさか完食するとは思いませんでしたから。それにしてもどうしましょう。また来るなんて言ってましたよ」
「あの食べっぷりは凄い、どれだけ食べられるもんか見てみたいですなあ」
「そんな、こっちは商売なんですから、たびたび来られちゃかないませんよ」
高橋は柳原の言葉にしばらく腕を組んで考え込む。
「たしかに、またタダ飯食われるのは癪ですな……。では今度来たら特盛ラーメン二杯に挑んでもらうんです。それで完食したら無料の上に賞金一万円、食べ残したら罰金一万円というのはどうでしょう」
高橋がポンと手を打った。
「大丈夫ですかねえ、また食われたら大損ですよ」
「一杯に二十分かけてましたし、量も増える。大丈夫でしょう。それにもしものときには罰金の半分は私が出しますから」
「そうですか? あの客が来たら連絡しますからね。すぐ来てくださいよ」
「そんな弱気でどうします。商売は愛嬌と度胸です。勝負してやりましょう」
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