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「あんさんたち、エライヤツに見込まれてしもたみたいですなあ」  そんな二人に声をかけたのは途中でやってきた客だった。 「あの人、関西では有名な大食いで、ラーメン食わしたら右に出るもんなしちゅう、山田清さんつうてな、あっちでじゃ『ラーメンきよし』と恐れられとるんやで」 「えっ?」 「そんな有名な人だったんですか?」  柳原が絶句し、高橋が訊き返す。この客が驚いた顔をしていたのは、どうやらラーメンの量ではなく『ラーメンきよし』の存在だったらしい。 「そりゃあもう、ラーメン屋十軒潰して家建てたちゅう評判ですわ。今のラーメンなら軽く五杯はいきますで。たった二杯じゃハナから勝負になりまへんわ」 「どどど、どうしましょう。また来るって言ってましたけど」  柳原がガタガタ震えながら言った。 「ど、どうしましょって、そんな」  高橋も途方に暮れている。 「まあ、大人しく降参するか、イチかバチか十杯で勝負するかでんな」  新しく来た客は、そんな無責任なことを言って、並盛のチャーシュー麺を注文した。
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