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 仕事がら関西支社や東京本社をはじめ、いろいろな支店への出張が多い『ラーメンきよし』こと山田清、この日はたまたまやってきたとある山奥の街でついタクシー代をケチったばっかりに迷子になっていた。今時携帯電話の電波も届かない僻地とあってはお手上げだ。昼なお暗い山中で舗装も途切れた道をひとりとぼとぼと歩いていると、家らしきものが目に入った。 「助かった、取り敢えず電話借りてタクシー呼べばなんとか帰れるやろ」  ただ、その家らしきものがいかにも怪しいのだ。ここは日本なのかと訝しみたくなる石造りの古城のような建物。それでいて妙に小さい。造りは本格的に見えるのだが、二分の一スケールとでもいうか、大きさは木造二階建てのアパートくらいしかない。 「危ないヒトが住んどったら、どないしよ」  警戒した清は、そっと外壁に沿って歩き、窓から中を覗いた。  室内は、装飾を一切排した剥き出しの石造りの広間になっていた。そこには様々な実験器具、医療機器が並び、壁際の本棚には先進医学の学術書とともに、革装丁の古書が納められている。まるでゴシックホラーに登場するマッドサイエンティストの研究所のようだ。
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