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その鼓動を、一番近くで
君は、私をぎゅっと抱きしめると、
耳元に唇を寄せて囁いた。
「俺は……
こうやって抱き合って心臓の音が近いのって、
心が寄り添ってる感じがして嬉しいから。
自信持ってよ。」
―――それは……私にとって、魔法の言葉。
ずっと、背中を丸めて生きてきた。
この身長がコンプレックスで、自分に自信が持てなくて。
でも今、
こうして背丈の変わらない君の腕に包まれると、
トクン トクン……
どちらともわからない規則正しい胸の鼓動が
お互いの一番近いところで響き合って、
心がじんわりと癒されていく。
温かい涙が次々に零れて、
君のパーカーの肩に小さな染みを作った。
あぁ……私は、世界一の果報者かもしれない。
抱きしめ返した肩越しに
少し先の未来が確かに見えた気がして、
目が眩むほどの幸せに
私は数回、ゆっくりと瞬きをした。
Fin.+
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