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彼(志摩くん)が車を降りたとき、校舎に向かって歩いていた生徒たちが一斉に彼の方をむいた。ように、みえた。ーーー正しくは、一斉に彼の横にいた三鶴の方をむいたのだけど。
その時彼は悟ったのだ。それまで彼に与えられてきた平凡、ーーーーー学校に着くと恭しく頭を下げられ、同じ学校の生徒は常に彼の動向を見守っていて、全ての人の視界には彼がいるということ、彼が、学園の中心であること、、、それが、いま、崩れたのだと。
自分の、今までの日常は、変わってしまったのだと。平凡な日常を失った悲しみもあっただろう。
けれど、その時彼は思った。
「あれこそが、みっつーこそが、僕以上に平凡であるべきで、男子高校生の手本なのだ。」
拳を握りしめ
(緊張によって手汗がにじませて)、
堂々と
(緊張によってロボット歩きをし)、
色白な頬にはさらさらと髪をなびかせ
(緊張し過ぎて蒼白となり)
ながら生徒達の中心を校舎に向かって歩いて行くみっつー。なんて、平凡で、かっこいいんだろう。綺麗なんだろう。
彼は、そんなみっつーに憧れた。
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