〔3〕人は歴史を自分の意図で選り分けている。 

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〔3〕人は歴史を自分の意図で選り分けている。 

 歴史を見るとき、または語るとき、人は自分自身がその歴史の中に生きる者として見たり語ったりしてはいない。人はきまって、自分自身を「歴史から切り離して」それを見たり語ったりしている。たとえば「自分自身の歴史」というものを考えるような場合でも、人はそれを「自分自身から切り離して」考える。つまり「自分自身の歴史という、客観的な事象」を、自分自身から切り離したところに想定し、それを離れたところから見て、そして語る。自分自身から切り離されたところに成立している事象を、「歴史として一般的に考えられているもの」として見また語るから、つまりそれが「誰にでも歴史としてわかるもの」として見また語るのであるから、むしろそのことが「自分自身の歴史としての正当性がある」ように考えることのできる証拠のように思われている。つまり、「自分自身の正当性は、自分自身では証明できない」ということが、ここで明らかなこととなっている。
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